こんにちは。ザキと申します。閲覧くださりありがとうございます!

そして、俳句に興味を持ってくださって大変うれしいです。ありがとうございます。

さて、俳句の入門書と言いますと、やはり藤田湘子先生『20週俳句入門』がもっとも有名ではないでしょうか。

本当に大変な名著でして、2022年には角川ソフィア文庫で文庫化されており、電子書籍版も販売されております。

もちろん私も購入しております。ただ、買ったのは単行本版で、まもなく、『待望の文庫化!』のニュースを目にし、(えぇ・・・・・・いや、うそやん・・・・・・)となった思い出があります。

併せて、現代の俳句の人の話をいたしますと、夏井いつき先生はスーパースターとしか言いようがありません。

全国放送のゴールデンタイムのバラエティ番組で、俳句の添削をやる。

そして大人気コーナーになる。

もう、冗談みたいな話です。

そのため、一般的には、前述の『20週俳句入門』と、夏井いつき先生「夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業」を筆頭とした各著作が、入門書の二大巨頭という印象があります。

そうした著作に触れてから買ったのが、今回ご紹介したい本です。

それが、小澤實先生『万太郎の一句』です。ふらんす堂さんより、2005年に出版されています。

同著は365日入門シリーズと銘打たれているもので、具体的には、

まず1月1日と項があり、

元日や海よりひくき小松原

と、万太郎の句が置かれ、その一句ごとに小澤實先生の鑑賞文が200字弱あり、それが1年分、(2月29日を含めて)366回楽しめる構成になっています。

万太郎の作品そのものに、学ばせていただいたのはもちろんです。

ただ、なにより、私は實先生の鑑賞文に、俳句を作る上で身に付けるべき感覚や、句を鑑賞する要領といった本当に多くを、学ばせていただきました。

内容をすこしだけ紹介させていただきます。

室咲のうつくしければうつくしき

たとえば掲句の鑑賞文では、のちに「室咲きの花のいとしく美しく」と改作されたことに触れ、「これでは甘すぎる」と述べられています。

このように万太郎は、既発表の句を改作することが多々あります。

その改作についての、小澤實先生の評言の意図を考えることで、まず、句の良しあしを判断する感覚を磨かせていただきました。(もちろんまだまだ勉強不足ですが)

淡雪のつもるつもりや砂の上

とても好きな作品の一つです。掲句では擬人化が使われています。擬人法はどうにも陳腐になりがちですが、その成功例として脳に刻んでいます。そして、實先生の評には、その成功の所以として、「はかなさが嫌みを感じさせるいとまを与えないのだ」とされています。むつかしい擬人法を成功させるヒントまでくださっています。

四月馬鹿朝から花火あがりけり

掲句も大好きです。この「四月馬鹿」ですが、實先生も文中で「なかなかの難題」とおっしゃっています。

この作品からはむつかしい季語を用いる際の感覚を学べます。

そして、なにより、『a音が十一も並ぶ。特に「馬鹿朝から花」までの七音が圧巻』の評は、私に語感、韻律がいかに重要かをお教えくださり、同時に、句の鑑賞法、楽しみ方を学ばせてくださった忘れがたい句でもあります。

小澤實先生の素晴らしい鑑賞文を言い出せばキリがありません。

そのために、なにか俳句作品について鑑賞文を書かせてもらうとなったとき、お手本としてしょっちゅう見返しています。

また、もう一つ、『万太郎の一句』がダントツで読み返した本となった理由があります。

同著は前述の通り、日付に万太郎の作品が一句ずつ、割り振られています。

そのことを利用して、疲れていたりなんなりで、本自体読む気になれない時でも、(とりあえず今日の万太郎読むか・・・・・・)と開いて読んで、句をノートに写したりしているうちに、なんとなくほかの本も読める状態に(いつもではありませんが)なりました。

そういう使い方もできるため、「万太郎の一句」は、私の一番の座右の書です。

まとめますと、同著の小澤實先生の鑑賞文は端的ですが、むつかしい大事なことを易しく述べてくださっています。

本当におすすめです。ぜひぜひ購入をご検討いただけますと幸いです。

以下は、回想です。

私自身、学生の頃は俳句になんてまったく興味がありませんでした。

芭蕉さんの「古池や」、と言われても(わびさびがええ感じで名作なんやろな・・・・・・)とあまり理解できませんでした。

子規さんの「柿くへば」も、(まあ、楽しそうやな・・・・・・)くらいの理解で、「をととひの糸瓜の水も取らざりき」に関しては(気の毒やけどそれがなんなん・・・・・・?)といっそう理解できませんでした。

そんな私が俳句に興味を持ったきっかけは、ヨルシカの「ただ君に晴れ」です。

この曲の印象的なフレーズが、子規さんの

絶えず人いこふ夏野の石一つ

のオマージュだと知って、(いやいやいや、俳句すごーっ!)

となって、今に到っています。

・・・・・・ぜひぜひ、ヨルシカも好きになっていただけますと幸いです。